ラングラーの歴史①





以前のお話で
世界三大ジーンズブランドについて少し触れましたが
その中の一つが「ラングラー」です
ラングラージーンズはリーバイス 、リーと比べると
最も異端と言えるのではないでしょうか

ラングラージーンズを販売するまでの過程も
3社の中で一番複雑ですし

ジーンズファンでもラングラーファンは
どちらかと言うと少数派で
語られることが少ないかもしれません

リーバイス リー とは一味違ったお話しになると思いますので
お楽しみいただければ幸いです

まず
ラングラージーンズを販売している会社は
「ブルーベル」
という会社です


このブルーベルという会社は
とてつもない大きな会社で
ワークウエアを販売する会社としては世界最大の会社であった
規模だけで言うと
リーもリーバイスよりも大きかったのです

ブルーベルの元々は
1904年にC・C・ハドソンという人が興した
「ハドソン・オーバーオール・カンパニー」
という会社が最初で
数多くのワークウエアメーカーを吸収合併することで巨大企業へと成長して
1943年に「ブルーベル」という会社になりました

当時、ワークウエアメーカーの合併は珍しいことではありませんでした
時代的に軍需が減少傾向のながれなどもあって
作業着メーカーは合併せずには存続が難しかった事情があります
多くのメーカーが合併していく流れの時期だったのです




有名な例を1つ挙げると
「ボスオブザロード」「キャントンバステム」というブランドを持っていた
「エロイサー・ハイネマン社」という会社があります
ヴィンテージファンなら聞いたことのある方も多いのではないでしょうか?
1946年にH・D・リー社はこのエロイサー・ハイネマン社を吸収合併しています

話を戻して
ラングラージーンズが登場したのが1947年なのですが
もともとラングラーという名称は
ブルーベル社が吸収合併していた「ケイシージョーンズ社」が持っていたもので
「ラングラー」の商標登録自体は1905年に行われていました

ブルーベルがジーンズの販売をするにあたって
ブランド名を考えている中
いくつかの候補があって「ラングラー」が採用されたのです

「ラングラー」とは「牧童」カウボーイの意味で
ラングラーの語源がドイツ語の「wrangen」(ランゲン・骨折り仕事)ということもあり
労働着であるジーンズ
カウボーイが履くジーンズ
というイメージにぴったりでした

都合の良い名称がたまたま余ってたとも捉えることができますね

そんなラングラーが1947年に出したジーンズが
ラングラージーンズ 11MWZ
というものです

まず触れておきたいのが
デニムのズボンのことを「ジーンズ」という商品名で出したのは
このラングラーが初めてでした
これまでの話でも当たり前のように「ジーンズ」と書いていましたが
それまではリーバイスの「ウエストオーバーオールズ」などと呼ばれており
ラングラージーンズの登場以降「ジーンズ」の名称が広まっていったとされています

次に「11MW」という品番ですが
「11ozのデニム生地を使用した メンズ・ウエスタン」の略称です

この名から分かるかもしれませんが
先に言ってしまうとリーバイスよりもカウボーイなどの馬に乗る人にターゲットを絞った商品でした
リーもそうでしたがラングラーはよりカウボーイ思考強めのジーンズを開発するのです




特徴を挙げていきましょう

まずシルエットは細めでした
リーバイスよりも細めなのはもちろん
リーバイスよりも細いリーよりも細いシルエットでした
ですが
ただ細いだけではなく股上を深く、尻のカーブを大きくカットした仕立てで
立った状態でも、馬の鞍(サドル)に跨っても腰回りに過不足なくフィットするようなシルエットです

当然リベットでの補強がされていますが
「スクラッチレス・リベット」(丸鋲)を使用することで
後ろポケットにもリベットがしっかりついているのに鞍などを傷つける心配は無い使用としました

コインポケットの位置がウエストバンドの真下にくっ付いた位置に縫い付けており
激しく馬に乗っている最中でも
中のものが飛び出ない工夫がされました

ベルトループの数が7本使用です
リーバイスでは前2本 左右2本 後ろ1本 の計5本で
5本であることが通常なのですが
後ろに2本追加された形の7本で
さらにしっかりとベルトでズボンがずれない使用になることで
激しく馬に乗った時の安定性の向上をはかりました

リーバイスやリーではウエストに付けられていたパッチは
後ろポケットの右側に取り付けられました
これはリーバイス、リーよりも後発ブランドのため、どこよりもブランド名のパッチを目立たせるための工夫でしょう
最初はパッチの素材を圧縮紙で販売しましたが、あまりにも破れるので、すぐにプラスチック製のパッチへと変更になります
パッチを革ではなくプラスチックにした理由は、乗馬の際に鞍の革とくっついてしまう恐れがあったからだと言われています

もう一つ面白いことに
最初は後ろポケットにリーバイス同様のアーキュエイトステッチが入っていました
1947年にはすでにリーバイスがアーキュエイトステッチを商標登録しているので
アーキュエイトステッチが入っていた明確な理由は不明ですが
翌年の1948年には
ラングラー(wrangler)の頭文字からとった「W」のステッチにすぐ変更になった

おそらくジーンズの後ろポケットにはアーキュエイトステッチを入れるのが当たり前のように思われていたのでしょう




今回は以上です
ブルーベルという会社
ラングラーというブランド
はじめて「ジーンズ」という呼び方を使い
11MWZという異端なジーンズを世に発表したお話しでした

次回も引き続きラングラーのお話しをします
凄いのは11MWZだけではありませんし
ラングラーの面白いお話はまだまだあります

お楽しみに