クリンチブーツを実際に履いてみた感想

最近知名度も急上昇し人気が高い靴修理店brassのブーツブランド「クリンチ」

ハンドメイドで丁寧な作り込みの靴で
見た目の美しさ
履き心地の良さ
何年も使った際のエイジング
どれにおいても評価が高いです

そんなクリンチブーツを実際に店舗brassに行って
色んなモデルを
試着して 購入もして 履き込んだ私が
感想を書こうと思います

購入を検討している方の参考になればと思います

目次
1 最強のフィット感
2 超細い!タイトな着用感
3 ハンドソーンウェルテッド製法の歩き易さ
4 最高峰の見た目の美しさ
5 馴染むスピードは早い
6 分かりやすくかっこいいインスタントエイジング
7 最高クオリティがゆえに履く人を選ぶ

1 最強のフィット感

私がクリンチブーツに足を入れて
一番の特徴だと感じるのはクリンチ独特の「フィット感」でした

ちなみに イェーガー ジョッパー エンジニア の3型を試着しました

クリンチブーツはオリジナルの木型を使用して製作されていますが
それは現代主流の木型よりも「抑揚の強い」木型で
さらに、より木型に近い形に製作できるハンドソーンウェルテッド製法で製作されています

例えばレッドウィングと比較すると
レッドウィングは新品時カチカチの革の中に足を入れてゴツゴツする感覚を覚える人が多いと思いますが
クリンチは新品のとき足全体に革が張り付いてキューっと強く吸いつかれているような感覚でした

レッドウィングよりもフィット感が高いブーツは多くあります
チペワ マーチン ウエスコ ホワイツ メイカーズ ローリングダブトリオ ゼローズ を履いた経験がありますが
ダントツナンバーワンのフィット感なのは間違い無いでしょう

ここで言うフィット感とは
履き心地が楽、とか、快適さ
ということではなく
足に沿ってくれる感覚のことです
悪く言うと、締め付けられると感じる方もいるでしょうから
万人受けするものでは無いでしょう

私が知る限りクリンチ以上のフィット感を出せているブーツはなかなか無いのではないかと思っています
買う買わないは別にしてブーツ好きは一度試着するだけでも面白いと思います

2 細い!タイトな着用感

クリンチブーツは
「攻めたシルエット」
と製作者の松浦さんが言っています

この「攻めた」とは
先述の、最強のフィット感、を追求しているということと同時に
「細い」ということでもあります

ただ細いだけではなく
攻めていると言っている通り
「けっこう細い」と私は思いました

靴って細い方がエレガントで綺麗に見えやすいので
クリンチはまさにそんな細く綺麗なブーツとなっています

ワイズの表記などはないですが
レッドウィングで標準のDよりは確実に細く
BやCワイズになるはずです

私の足のワイズはサイズに対してEEと、すこし広めなのですが
それに合わそうとすると
サイズを3〜4サイズほどアップしないと無理そうでした
でもそうすると
爪先の捨て寸が多くなりすぎることが嫌でした
せっかくのクリンチですので
なるべくピタピタのものが欲しかったので
1サイズアップのものを
オーダーの際に爪先部分だけ広く製作するようにオーダーしました
ですが
それでも出来上がったものの爪先は私には細く
靴修理店でストレッチャーでの幅出しをしてもらいました
これで大分ともともとのものより爪先はひろくなったのですが
それでもまだ足指部分がきつく
我慢して履き続けて馴染ませました
それでようやくなんとか履けるようになった感じです
爪先はきついと感じるのですが
爪先以外は最強最高にフィット感があって感動する履き心地です
いろんなところで言われる
土踏まずの抑揚、フィット感は他のブーツにない感覚ですし
カカトのホールド感も心地よく
この土踏まず、カカトを主に、足全体を程良く加圧されている安定感が凄いんです

逆を言うと
着用感がきついですので
サイズアップしてゆとりのある靴が好みの方には
クリンチのフィット感の良さを理解出来ないかもしれません

3 ハンドソーンウェルテッド製法の歩き易さ

クリンチブーツは歩きやすさもポイントだと思います
それは先述のフィット感のおかげももちろんですが

オリジナルの木型とハンドソーンウェルテッド製法のおかげで
新品時から抑揚のあるレザーインソールで足に沿ってくれる感じがあるので
足裏の足当たりも柔らかく感じますし、実際足も痛くなりにくいでしょう

レッドウィングなどでは
馴染むまで鉄板のうえを歩いているような固い足裏感覚を感じる人も多いようですが
比較するとクリンチは薄いクッション付きインソールが入っているのではないかと感じるくらい足裏の感覚は柔らかく感じると思います

さらに
ハンドソーンウェルテッド製法特有の新品時からのソールの反りの良さがあるので
ワークブーツ特有の新品時の硬さを感じにくく
歩き心地が良いと感じます

ワークブーツ特有の分厚いラバーソールが付いていても
新品時から屈曲性が高いことを感じれますし
履き込み馴染むことでグッドイヤー製法の靴には戻れないような歩きやすさがあると思います

4 最高峰の見た目の美しさ

何より多くの人が魅力に感じるのは
靴として見た目の美しさではないでしょうか

現代日本のアメカジでのワークブーツは
1950年前後の無骨なワークブーツデザインがベースのものが多いです

クリンチブーツのデザインソースとして
戦前の年代を参考にしていて
ドレスシューズやワークシューズなどの境目が曖昧な頃
ワークブーツの無骨さと、ドレスシューズのエレガントさが混じり合っており
その当時のディテールや製法をベースとしているので
他ブランドとは雰囲気が大きく異なります

先述にも書きましたが
抑揚のある木型とハンドソーンによる
流れるように曲線的なセクシーなシルエット

エンジニア、ジョッパー、ジョージブーツの大きな甲の革を
靴の形にするための癖づけ「クリッピング」

爪先の型崩れを防ぐために現代ではほとんどのブーツには入れる先芯
その先芯を入れないことで爪先まで馴染みやすくする「ソフトトゥ」
「先芯なし」「フラットボックス」などとも言われます

使用する革もかなり拘っています
ホースバット
ラティーゴ
カーフ
といった高級レザーで植物タンニンなめしのものを主に使っており
染めも染料染め、顔料染め、をオリジナルで行っています
特に人気の色はブラックで茶芯のモデルです
どれもヴィンテージのような美しい経年変化をすることで評価の高い革ばかりです

それら全てが合わさり
クリンチオリジナルの靴となり
ヴィンテージシューズを超えるような美しいヴィンテージ感が
発揮されるのだと思います

5 馴染むスピードは早い

私自身色んなワークブーツを履いてきたと思っているのですが
クリンチブーツはとても馴染みやすいブーツだと感じました

もともとがフィット感が強く
サイズ感さえ合っていれば、履き始めから足が痛くなりにくいと思います

ハンドソーン製法自体も馴染みやすい製法です

使っている革もどれも馴染みやすいと感じました
クリンチブーツのレザーで
厚みがあって硬くハリのあると言われるホースバットレザーがあります
私はホースバットのブーツを購入しました
一見硬くて馴染みにくいと思われるかもしれませんが
レッドウィングやウエスコなど米製ワークブーツによくあるような革よりも厚みがあるとは感じません
馬革特有のシワの入りやすさもあります
履いていて動く部分は柔らかくなるスピードもかなり早いと感じました

ラティーゴやカーフはもっと馴染みやすいと思いますし
どの革も履きやすさ馴染みやすさの良いものでしょう

6 分かりやすくかっこいいインスタントエイジング

クリンチブーツはエイジングが分かりやすく出ます
人気の茶芯レザーはどれも茶芯が出やすいですし

使われている革は
植物タンニン鞣しの革がほとんどで
革の表情の変化が大きく早く分かりやすいです

タイトにフィットするブーツのためシワも入りやすいです

人気のナローシルエットなCNラストでソフトトゥ使用では
爪先まで形が沈み、シワが入ります
少し履くだけで新品との雰囲気の変化が大きく出やすいです

以上の経年変化は
一言で言うと「インスタ映え」します
それは私が思うに
新品との変化幅が大きいからです

しかもそれが他のブーツよりも
履く時間が短くて変化するからです

クリンチの経年変化は手軽なインスタントなものだとも思います
それを良いか悪いかはそれぞれの好みですが
私は大好きです

変化が分かりやすいと履いていて楽しいです

7 最高クオリティがゆえに履く人を選ぶ

クリンチブーツは
アメカジ好きのブーツの中で
最高峰だと私は思います

それは個人の好みとかではなく

「良い靴」を作るため
手間ひまかけてでも
考えれる最高最善の方法で製作している靴がクリンチだと思うからです

その分値段も高いです
ホースバットのエンジニアやジョッパーでは20万円前後します

そんな高額な靴なのに
生産が追いつかないほどに人気であり
さらにはリピーターも多いことが
最高峰と言っても良い一番の理由ではないでしょうか

ジャンルは全く違いますがハイブランドで例えると
エルメスのバーキンみたいなものだと思います

そのように値段も品質も最高峰であるクリンチは
誰にでも合うものでは無いとも思います

一番にかなりタイトな靴の形は
人を選ぶでしょう

良い靴ほど最初はキツく我慢して馴染ませることで
どんな靴よりも履きやすくなる
という人もいますが
クリンチはまさにそういうタイプとも言えると思います
ですが
結構細いので、さすがに私のようにワイズがEEやそれ以上の人は
シンプルに合わないでしょう
その分サイズを上げれば履けますが
そうなるとクリンチ本来のフィット感とは少し違ってくるような気もしますし
高額な靴で、そんなにサイズアップするのは勿体無くないでしょうか

ジョッパーやエンジニアでは
フィット感を高めるために
履き口が通常よりも狭くなっています
なんとなく気軽に履ける靴では無いように感じる方が多いのではないでしょうか

よくある話ですが
レッドウィングでサイズ選びを失敗したという話があり
それにより買い直したり、履かなくなったりする場合があります
クリンチブーツはサイズ選びが他ブランドより難しく感じますし
値段も高いですし、シンプルに敷居が高いでしょう

クリンチブーツを購入するのって
ほとんどの人は結構な勇気を出して買うと思います
クリンチが憧れのブランドだという人も多いでしょう
それだけオリジナリティーのあるものですので
万人に合うものとは言えないでしょう