LEEの歴史②〜リーライダースの誕生〜





前回に引き続き
リーのお話をしていきます

前回、リーが新しいものを出し続けるお話しをしましたが
まだまだ続きます

1924年
「カウボーイ・パンツ」
を発売します

ようやくジーンズのお話が出てきました

カウボーイパンツという名の通り
馬に乗る人にターゲットを絞ったジーンズで
カウボーイやロデオ選手の意見を重視して作った作業ズボンなのです

話がそれるのですが
「カウボーイ」と聞くと馬乗りをイメージしますが
「カウ」とは「牛」です
「馬」は「ホース」です
「ホースボーイ」じゃないのか、と思う人もいるかもしれませんが
「カウボーイ」とは「牛飼い」のことで
馬に乗って牛の世話をしていたので
馬乗り=カウボーイ というイメージが根付いたのです

話を戻しまして
カウボーイパンツの特徴として
13ozの左綾デニムを使い
リーバイスよりも細めのシルエット
というところです
この頃にはリーバイスのリベットの特許も切れているため
当然ポケット部分に補強のリベットも打たれています

デニム生地は一般的に右綾織で織られるのですが
左綾のものが採用されました
これは左綾デニム生地のほうが柔らかくなり履き心地も良く
右綾の方が硬くなるので
右綾のリーバイスとの差別化を図るために採用されたと言われています

右綾、左綾のお話しは説明が難しく
YouTubeで分かりやすく説明されている動画があるので
興味のある方はご覧ください

またシルエットも当時のリーバイスよりも細めでした

馬乗りは足と馬がよく擦れるのですが
ズボンがブカブカだと、ズボンと足が擦れてミミズ腫れになってしまうので
なるべく足にフィットしたものが好まれる傾向にあったからです

現代でも馬に乗る競技のズボンはある程度フィットしたものがほとんどで
その意味を分かっていただけると思います

リーバイスがカウボーイに履かれていなかったと思うかもしれませんが
そうではありません
やはりリーバイスは人気でカウボーイ含め全てのワーカーに支持されていました
リーバイスが圧倒的な人気であったからこそ
ターゲットを絞った作戦をとったリーが今まで生き残ったのでしょう

もう一つ誤解しないでほしいのは
リーはカウボーイしか履いていなかったわけではありません
多くのワーカーに使われていましたが
特にカウボーイ向けに、重点を置いた物づくりをしていたということです




1924年カウボーイパンツ発売直後すぐに
ディティール変更ポイントが発生します
後ろポケットのリベットを廃止することになりました

理由は馬の鞍(サドル)を傷つけるからです

リベットの代わりに糸によるカンヌキ止留めで補強されることになりました

同じような理由でリーバイスの後ろポケットリベットに隠しリベットが採用されるのが1937年
リベット自体無くなってカンヌキのみでの補強になるのが1962年
というのを考えると
かなり時代の先を行っていたとも考える事ができるのではないでしょうか

1925年
ジェルトデニムという生地を開発します
これが凄いもので
糸の撚りを通常の撚り度合いよりも多く撚ることに成功し、より密度の高い生地ができたのです
11,5ozの生地なのですが 強度は13ozと同クラスという優れものだった
パッと見はそんな丈夫そうに無く見られたのだが、実際履くとかなり丈夫で評判が良かったのである

1926年
人気商品のビブ・オーバーオールにも変更ポイントがあった
肩紐にスライド式金具がつけられ
長さを、簡単に、自由に調整できるようになりました

現代では当たり前の調整機能ですが
実はリーが最初に導入したもので
以後全く変わる事なく現代まで使われ続けることになるのです

同年
リーはもっと凄い新兵器を導入する
ズボンの前開き部分に世界で初めてファスナーを使いました
これはズボン界の中でも革命であったのは間違いないと思います
現代流通しているズボンの大半はファスナーで
ボタンのズボンは一部のマニア向けとなっているのですから

Texture of blue denim jeans with button and zip

1927年にはユニオンオールズにもファスナーを採用しました
前回紹介した画期的なユニオンオールズに
画期的なファスナーを使った
画期的すぎる商品なわけで
この商品のネーミングは
千ドルの賞金付きで一般から募集するというイベントも開催されました
販売促進効果も抜群でした
選ばれたのは「ウイジット」というという名前でした

また同じくして
現代まで人気の素材である
デニム生地の仲間で白のストライプを織り柄で表現した生地である「ヒッコリー」と「ヘリンボーン」も発表しており

新しいことを恐れず試していく自由な社風だったことが良く分かる

1928年
ヘンリー・デイビット・リー が 79歳で無くなります
もともと若い頃に結核を患ったり
敏腕社長のイメージとは逆で体の弱い方だったようで
長生き出来た方だったと言われています

世の中に残した物の種類の数で言えば
リーバイスをも超えたかもしれません

リーが無くなったのと同じ年に
サンフォライズド加工が誕生します
日本で言う「防縮加工」のことで
「サンフォード」という名前の人物が発明したことから命名されたもので
簡単に言うと、糸を予め縮めることで、製品を購入した後に洗濯しても縮まないという技術です
元々は洗っても縮まないワイシャツのために作られた技術ですが
これがデニム生地にも使われるようになります




現代の生地はほとんどに防縮加工がされており
逆に縮む生地が珍しいくらいに普及した技術です

リーバイスはいまだに防縮加工を行わない生地を使い続ける商品を出しているのに対して
リーはいち早くデニムに防縮加工を取り入れました

1931年
「スリム・ジャケット」が登場します


101J(「J」はジェルトデニムのJ)と称されることもあるし
現在では「ストームライダー」と呼ばれることも多い
当時「ウエスタンジャケット」と呼ばれたのだが
デニム生地のショート丈のジャケットを
「ジャケット」と呼んだのは
この「スリムジャケット」が初めてでした

リーバイスでもデニム生地のジャケットはずっと販売していましたが
この頃は「ジャケット」ではなく「ブラウス」と呼んでいたのです

デザイン的にもかなり優れていたと言えます

この当時にしては立体的な仕立てで
今見ても古さを全く感じない

同年代のリーバイスのデニムジャケットを比べると
通称「ファースト」と言われる形状であったが
ファーストは今見れば
悪く言うと「古臭い」
良く言うと「クラシック」
という具合に見える人が多いと思います

リーバイスがストームライダーのような
立体的な仕立てのデニムジャケットを出したのは
1962年の通称「サード」と呼ばれるものからです
このサードのデザインが現代のデニムジャケットの
基本デザインになっているのは皆さんご存知だと思います

そうやって比較すると
リーというブランドの
時代の先取りレベルは
尋常じゃないことがお分かりいただけるでしょう

タイムマシーンで未来から来たレベルで先を走っていたようにも思います

これも最強のキングであるリーバイスよりも
後発メーカーだからできた努力のたまものなのでしょう

1943年
H・D・リー・マーカンタイル社は
社名を「H・D・リー」へと変更します

同年
今ではおなじみである
リーのジーンズの後ろポケットに入っているステッチ
「レイジーS」
を採用する
これは 緩やかなS字カーブ という意味なのですが
馬の口をモチーフにデザインされたもののようです

実はレイジーSが採用されるまでは
リーバイス同様アーキュエイトステッチが入っていました

今になって
リーにアーキュエイトが入っているのは違和感しかありませんが
当時はそうでもなかったようで
ジーンズの後ろポケットにはアーキュエイトステッチがあるもの
というような感覚でした

リーだけでなくラングラーもアーキュエイトステッチを入れている時期がありました

以前のリーバイスのお話で
書きましたが色々あって
リーバイスは1943年にアーキュエイトステッチを商標登録していますので
当然それ以降他社は使えなくなりました

ここに来てようやく
私達の馴染みのあるリーのジーンズの姿になったと言えるでしょう




最後におまけのお話として
「バディ・リー」のお話しをしておきましょう
昔ながらのジーンズショップや、アメリカンな雑貨屋に置いているのを見たことのある人も多いのではないでしょうか?

リーのマスコットキャラクターなのですが
初めて登場したのは紙のカタログ上でのイラストでした
実際の人形が作られ始めたのは
1922年、百貨店に販売促進グッズとして置かれたのがはじまりです
当時のアメリカではキューピー人形が流行っていたこともあり
売ってほしいという声が多く
希望者には2ドル50セントで販売をしたのです

このバディ・リーの凄いところは
着せ替え可能で
小さいながらも実際に存在するリーのウエアを細かく作り込まれているところである
1962年に製造中止になるのですが
様々なワークウエアを身にまとうバディ・リーは可愛らしく
いまだにコレクターの間では高額で取引される人気っぷりなのです

ちなみに
バディ・リーは
男の子らしいです