517ブーツカットジーンズはカウボーイに愛用されていない





前回ベルボトムジーンズのお話をしましたが
今回はブーツカットのお話です

ベルボトムはファッション目的で生まれたとお話しました
それは私が言わなくたって多くの方がなんとなく分かっていたと思いますが

ブーツカットはどうでしょうか

ブーツカットといえば
リーバイス「517」
を思い出すのではないでしょうか

リーバイスのジーンズで最も有名な品番を3つ挙げるなら
「501」「505」「517」
ではないでしょうか

その中でブーツカットシルエットである517は
「一番クセのある」と感じる人も多いでしょう

517は1971年に発売されました

517というブーツカットジーンズは
684や646のように極端な裾広がりではなく
ストレートジーンズの裾口を若干広げた程度で

ウエスタンブーツを履くカウボーイのために作られて
カウボーイやロデオ選手から絶大な指示を受けていた
「実用的なワークパンツ」
と思っている方も多いのではないでしょうか

イメージとしては間違っていないのかもしれませんが
若干誤解が入っています




ジーンズの歴史の中で
517の発売された1971年というのは比較的新しく
当然それ以前の方がカウボーイという職業は活発だったし
ジーンズは501のようなストレートシルエットでした

それまでリアルなカウボーイ達がどのようにジーンズを履いていたか説明しましょう
大半のカウボーイ達は
裾口をロールアップ(折り返して)させて、短めの丈で履いていました
そのほうが拍車の扱いもし易かったり、足さばきが良かったのです

←拍車

他にはウエスタンブーツにジーンズの裾を入れる
いわゆる「ブーツイン」させて履いていました

つまり何が言いたいかと言うと
くるぶしまわりにズボンがあると邪魔で支障が出るのです

競馬を見てもズボンをブーツインさせている人がほとんどのはずです

ではなぜブーツアウトさせることを前提としたようなシルエットのジーンズができたのでしょうか

ウエスタンブーツにストレートシルエットのジーンズを合わせると
ブーツの甲の高さが邪魔してジーンズの裾口がすっきり下まで下りてくれず
生地がダボつくことがあります
ですが517のようなシルエットだと、そういう問題は解消され
しっかりと裾口が下まで下りてくれてスマートで美しい足元が演出できます

ですが先ほど説明した通り
リアルなカウボーイはロールアップやブーツインさせて履いており
足の下の方までジーンズを下ろして履くことは無いですし
とてもカウボーイにとって必要だとは考えにくいでしょう




ですがカウボーイの服装が
ファッションとして流行するようになり
馬に乗らないカウボーイが増えたのです

つまりオシャレとして
カウボーイの格好をするようになったのです

馬に乗らないのでジーンズをロールアップさせて短め丈で履く必要性は無いですし
ファッションなので合理性よりも格好良さです

中途半端にブーツインなんてすると足が短く見えますし
ブーツカットは足を長く見せる効果もありますし
ブーツに合わせると裾周りもエレガントで収まりが良いです

517のフラッシャーには
「サドルマン・ブーツ・ジーンズ」
と印刷されています

カウボーイを意識して作られたのは間違いありませんが
それは
「馬に乗らないカウボーイ」
カウボーイルックのオシャレさんです

もちろんあたらしいデザインでカッコ良いものなので
リアルなカウボーイにも使われたとは思いますが

間違いなく大半は「馬に乗らないカウボーイ」に向けてのジーンズになったのです